3年B組金八先生第8シリーズ第一話を観る

社会的に重いテーマをメインに据え、胸をエグるような内容で展開された近年の”金八”だったが、今作では、そのダークサイド3部作(5,6,7シリーズ)で過激になりすぎた感の有る方向性を一旦見直し、「初心に帰る」とプロデューサーが宣言。その姿勢に賛同しつつ、「初心に帰る」っつってるわりに脚本家は交代したまんまかよ!というアンビバレンツな姿勢への疑問と、前シリーズ後半から急遽登板という難しい状況の中、見事に”金八”を描いて見せた新脚本家・清水有生氏への期待が綯い交ぜになったまま本放送を迎えたのだが…、結論から言うとすんげええええええー良かった!!視聴後の安心感が、ただ事じゃなかった!

第一話で主に描かれたのは、「親の期待に押し潰されそうになる子供」と、「親の無関心に自分の存在意義を見失う子供」という、親に苦しめられるという点で共通しつつも対照的な二人の生徒。当然、金八はその親たちと対決することになるのだが、もう第1話から近年なりを潜めていた”金八らしさ”が炸裂。前者の親が、我が子の描いた絵に対する評価を不服として乗り込んできた際には、あたかも柳の如く親の無茶な主張をかわすのは当然として、事前に一悶着あって美術の先生にデジカメを壊されたことに怒り、弁償しろとまくし立てる親に対して、どさくさに紛れて金八

「(デジカメが)たいした値段じゃないから!どうせたいした値段じゃないから!」

言われたらすげー嫌なことをぼそぼそ言うのだった。この、親を煙に巻きつつも、ヤラシイまでのジャブをしっかりと繰り出すスキルが実にベテラン教師たる金八”らしい”。見ていて胸がすく。

そして、後者。我が子が寂しさから家を抜け出て、夜な夜なネットカフェに泊まっていることすら気が付かない無関心な親に業を煮やした金八が、家に乗り込んでいく。前者は、親が学校に乗り込んで来る、後者では金八が家に乗り込んで行く。と、そこらへんも対になってるわけですな。 で、生徒の家に乗り込んだ金八がもう金八爆発。まず、①さも当たり前然として家にあがり込み、 ②教師は家庭に口出しするなとキャンキャン喚く親に、いきなりブチ切れて「そんな事言いに来たんじゃない!!」と怒鳴って強引に黙らせ(←最高!)、 ③黙らせるや否や今度は一転「お願いですから…」と下手に出て、④言うだけ言って即座に立ち去る。この金八お得意の壁ハメ即死コンボ…、完璧である。これぞ金八である。これでこその金八である。このくだりがあったことで、僕の満足度は150%増になったのだった。

両者の生徒へのケアも抜かりない。ケアの手段は、勿論『授業』!!!! 一見、直接係わりの無い様な授業をして、生徒自身に大事なことを気付かせる。説教 or 授業 or DIEといった感のある金八だけに、その『授業』が悪魔的威力を発揮するのは当たり前なのだが、それにしても今回の生徒、妙に素直で物分りがいい。そこについて違和感を持たれる諸氏もおられることであろうが、僕は、そういった部分のストレスの無さで気持ちよく見られた。まぁ全員が全員、今回みたいな子でも困るんだけども。ここについては、ほぼ全肯定の盲目ファンらしく、金八が一学期中において既にクラス掌握済みで、ある程度生徒と金八に信頼関係が出来ている、と勝手に補完しておくことにします。


今作は、ケツから頭、全部が山場!!(c 般若)って感じの、見逃せなさのある展開ではなさそうだけども、毎回生徒一人に焦点を絞って丁寧に描いていく姿勢は今回で見て取れたし、傑作になる予感がします。大人から見れば本当にどうでもいいような下らないことを、まるで地球滅亡と天秤にかけて僅差で勝つぐらいの勢いで悩んで、どうしようもないような思考を巡らす。そんな生徒を描いていって欲しい。それと平行して展開されるであろう、学校経営の立場から物を言う校長と人間教育至上主義である金八の対立。これがどちらの主張にも一理あるので、どこに着地させるかが見ものか。あと、個人的に注目の生徒は、トーゼン3Bの黒い3年生こと学級委員のモンドくん。アフロアメリカンである彼の人選自体、製作側の何か意図があってのことだと思われるので、その意図するものが一体何なのか注目せざるを得ない。今回ちらっとやった英語の授業のシーンで、先生が読んでるテキストの内容がよりによって『キング牧師』の話だったので、ま、まさか、いきなり直球?!まだこっち全然温まってないよ!!と部屋で一人ビクッとしたのだが、特に何も無く…。今後に期待しますっ!