Ai !

例えば、夜、布団に入る時。27時間TVで録画した「シャボン玉」を観てから寝ようと思い立ってしまう。照明を落とした部屋でビデオをセットし、手探りでリモコンの再生ボタンを押す。曲が終わる。巻き戻す。再生する。曲が終わる。巻き戻す。再生する。曲が終わる。巻き戻す・・・。その全ての動作が道重ばりの無意識で延々とリピート。で、気が付いたら、朝!しかも、新聞見たら3日後・・・えぇ!!



と、多少誇張しているが、これが8割方マジな話なのだから事態は深刻である。モーニング娘。の「シャボン玉」にはそういう訳のわからない常習性があって困る。人間らしい生活すら脅かされる。なんなんだこれは。そうこうしているうちに早くもビデオテープが劣化してきた訳だが、それだけ観れば、聴いていただけでは見えなかったものが当然見えてくる。この曲、目に見える部分でもかなり凄まじい。



今回のダンスは、モーニング娘。の中でもかなり激しい部類のものだと思う。ほぼ全般に渡って、体を激しく上下させる振り付けなので、それは単純に体力を使う。そして、(画面では歌ってる者に焦点が当てられているので全体像を掴むことが困難なのだが)見る限り、フォーメーションチェンジも頻繁に行われているようで、15人からなる編成におけるそれとなれば、必然的に集中力も要求される。要するに、非常に疲れる振り付けだと言える。その上あの歌い方だ。一曲で消費する体力は、今までの曲と比較にならないのではないだろうか。



そこで重要なのが、石川の長台詞。あれは、この曲で必要不可欠なのは勿論だが、あの『長さ』でもなければならないと思う。あの長さがあってこそ、曲的にも、体力的にも、両方の意味でのクッションとして、ブレイクタイムとして機能する。そこから終盤にかけての爆発力を生み出すためには、あそこでチャージすることが必要なのだ。僕は、この曲の全てはセリフ後の畳み掛けるような展開にあると考えているので、尚更、その重要性を感じずにいられない。



そうなると自然と浮き彫りとなるのが、そのブレイクタイムで1人、休むことなくセリフを言っている石川梨華の凄まじさだ。今回の曲で石川に求められているレベルは、かなり高い。それは勿論あの長台詞のことなのだが、あれは、恋愛で半ば狂乱気味になった女のセリフであり、それを表現するには、返答する間も与えないような勢いで言う必要がある。息継ぐ間もなく言わなければ、なんの意味も無い。あの激しいダンスの後なので、それだけでも難しいと思われるのだが、更に難しいことに、セリフ中に携帯電話の音が入るので、その音ともリンクさせて言わなければならない。挙げ句、振り付けとも連動しているので、言うスピードをも計算する必要さえある。表情も作らなければならない。当然、セリフを噛むことなど許さるものではない。僕は、生放送でこれをやってのけた石川は、かなり素晴らしいと思う。



確かに、石川には歌唱力が無いが、これだけ難しいセリフパートをやってのけるということは、モーニング娘。内の分業体制的にも、それを補ってあまりあるのではないか。石川に飛び道具的なセリフが与えられる機会が多いのは、ただ歌唱力の問題だけではなく、彼女が適材であるからではないかと思う。僕は、特別、石川のことが好きという訳ではないのだが、あまりこの部分において石川梨華を褒めているサイトを見受けられなかったので、少しでしゃばってみた。



このように、「シャボン玉」は人を病的なまでにマジヲタ全開にさせる。その熱は、しばらく冷めそうにないし、醒めそうにない。上の文章は、その熱が冷めた後に読み返すと、確実に顔が真っ赤になるレベルのものであり、普段は内に秘めておくべきものなのだが、「シャボン玉」においてそんなことは通用しないのだった。こんな恐ろしい曲に出会ったのは、多分初めてのことだ。