3年B組金八先生 第11回「鶴本直・決断の旅立ち」を観る

前半は、主に鶴本直のホルモン投与開始のエピソード。性同一性障害を持つ直が、ついに始まる念願の男性ホルモン投与を前にして逆に動揺し、金八のもとを訪れる。一通り直の話を聞いた後、唐突に第6の出席を取り出した金八が始めたのは、一人ぼっちの熱い授業。動揺を緩和するために取る手段が、慰めるでも励ますでもなく、授業。さすが金八である。まさに教育の鬼。まぁこれは、卒業生後日談で展開される単発モノの2時間スペシャル(通称:金スペ)の縮小版ですな。時間的にも登場した卒業生の数的にも縮小版だった。個人的に第6シリーズにはあまり思い入れがない(熱い授業のシーンで訳もなく泣いたけど、もはや僕の涙なんて相当安い。)ので、ここはさくっと終えるとして後半の話。

しゅうが虐待されている現場を崇史が目撃してしまったことにより、話が一気に展開する。崇史はしゅうに口止めされたが、なんとかしゅうを助けたい崇史は、舞子に相談の上、金八にしゅうの事情を話してしまう。事情を知った金八がしゅうの母親を問い詰めに行くと、そこに例のヤクザが乗り込んできて殴る蹴るわの大暴れを始め、しゅうを助けるために「ドラッグは俺が持ってる!」と、いきなり口から出まかせ100%のことを口走った挙句、「お前にもおっかさんがいるだろ!」とヤクザに説教を始めた金八(最高!)はあやうくドスでブッ殺されそうになるが、しゅうの家に向かうヤクザを目撃した舞子と崇史が警察を呼んだお陰で事なきを得る。イの一番にドアをノックしたのは、当然大森巡査!! ここで繰り広げられた「大森君!早く」「きんぱつぐん!」のやり取りは、声だけで相手を確認できる仲である二人だからこそ成立するやり取りで、グッときた。

その騒動でしゅうの父がドラッグの常習者であることと母が父にドラッグを打っていたことが警察の知るところとなり、二人とも逮捕されてしまう。おそらく最終話直前までは引っ張るだろうなぁと思っていた「しゅうとヤクザとドラッグ」の問題が一応解決し、これにて一件落着かと思いきや! ここで更に激震! 家庭の問題で思いつめていた崇史が、一連の騒動で家庭を壊された(と、受け止めた)しゅうに「お前のせいでバラバラだ。君は友達じゃない。」と言われてしまったことで唯一の支えを失い、自宅マンションから飛び降りてしまう。で、それを知ったしゅうは、錯乱し、自宅に残されていたドラッグ一式セットに手を伸ばし・・・と、ここで終了。

すげぇー怒涛のエンターテインメントだった。今まで三ヶ月かけて少しずつ進んできた話が一気に片付いた上に、思いも寄らない方向に進んだ。金八シリーズで生徒の中から自殺者が出たのは(言葉でのカミングアウトや、無意識のリストカットはあったけども)、初めてだと思う。いよいよ来るとこまで来たなぁ・・・。

ちょうど第6シリーズの生徒が出てきたので第6と比べるけども、第6より今回の方が相当ダークな展開だけど、まだ今回の方が見ていられる(と書くと嫌々見てるみたいだけど違うよ!)のは、金八家で繰り広げられる武田鉄矢の技量のみ(もっと言えば表情のみ、さらに言えば「目の動き」のみ!)でぶっちぎるコメディータッチのシーンがあるからだと思う。第6シリーズは、学校では問題続発、家では命が危ない病人がいるわで、まるで救いようがなかったが、今期は、しゅうを中心とした本編たるダークサイドドラマと、反比例する勢いで金八家でのコメディードラマが展開されているので、ちょうどいい感じに緩和されている。まぁ、そのコントラストがひとつのドラマとして成立するか否かぐらいにすごいことになってるいるのだけど、あまりダークに偏重し過ぎると個人的にげんなりくるので、どうかこのバランスで突っ切って欲しい。