危機感

僕自身がそうだが、とりわけ関東地方に住む人間は、地震というものをナメすぎていると思う。



地震が起きた時の自分を思い出してみて欲しい。あなたは、まず、反射的に照明のヒモを見るだろう。そして、それが地震だと確信し、「あ、地震だ。」かなんか言った後、おもむろにTVをつけ、NHKの速報でその時の震度を知ろうとする。で、「震度4だって。」「あーやっぱりね。結構大きかったしな。それでマグニチュードは?」などと知った顔で無意味な会話を交わし、それだけである。関東に住む人間の多くは、それしか思い浮かばないはずだ。なぜなら、地震を数多く体験してはいるが、身の危険を感じるような地震を体験していない。そんな「慣れ」から、たとえ地震が起きても、「どうせすぐに収まるだろう。」と心のどこかで思っている。僕自身、まるで地震が起きてすらいないかのように、日常(後藤真希のPVを見るなど)を続ける時もある。これでは、圧倒的に危機感が足りなすぎるのだ。



もっと地震についてよく考えなければならない。こと関東地方に関して言えば、十数年間に渡って「今年は、でかいのが来る。」と言われており、どれだけ用心しても徒労にはならないだろう。しかし、明らかにもう助からないと思える大地震では、運を天に任せる以外にないのも事実。なので、ここでは、下手したら大怪我を負うけど、心掛け次第で大抵は助かる程度のプチ大地震について考えていきたい。



地震の恐ろしさはいろいろあるが、僕は、「いつ来るか分からない」というところにこそあると思う。そこでまず考えるべきは、大地震が起きた時、自分が一体どんな服装をしているのかということだ。その瞬間、会社や学校に行っていればまだいい。多少はまともな服装を纏っている。問題は、家にいる時である。普段、一目置かれるぐらいのオシャレさんで通ってる人でさえ、家では気がゆるみ、とんでもない服装をしている可能性が高い。



我々「関東人の部屋着研究会」の調べによると、約80%もの人間は、「プロレスラーのOFFの日」よろしく、部屋で「トレーナーの上下」を愛用しているという。異常事態である。更に、その中で実に75%以上の人間は、トレーナーはトレーナーでも、親が買ってきた(若しくは、親が送ってきた)トレーナーの上下を着ているというのだから恐ろしい。わけのわからない英語や、よくわからない猫のイラストとかが胸にデカくプリントされているようなトレーナーを着て、いざという時に逃げ出せると思ってんのかお前らは!!他人に見せるものじゃないという気のゆるみからくる手抜きだかなんだか知らないが、そんなもの、地震は全く容赦しないということを覚えておかなければならない。



また、その瞬間、自分が一糸纏わぬ生まれたまんまの姿である可能性についても考えなければならない。いつ来るか分からない地震において、その可能性は否定できないのだ。例えば、風呂に入っていたと仮定して考えてみると、その際は勿論素っ裸である。しかもビショ濡れである。最悪の場合、「髪を洗っていて、シャンプーが目に入っている状態」という、いきなりヤバイ状況になっているかもしれないのだ。



その時、我々は一体どうすればいいのか。無論、その場から逃げなければならない。しかし、裸だ。とりあえず、泡で主要な部分を隠すか。それでは馬鹿だと思われる。分からない。どうすべきか分からない。でも、死にたくない。やりたい事はまだいっぱいある。もう誰でもいいからアイドルと結婚したい。あなたとダンスが踊りたい。パニックだ。ただおろおろすることしか出来ない。意を決して、裸で外に飛び出す。命は助かったが、残念ながらあなたの人生はそこで終わりだ。これ以上の恐ろしさがあるか。



その他にも、SMの女王様がプレイ中だった場合どうするのかとか、いろいろと考えなければならないことが山積みである。しかし、まずは、僕が普段愛用している部屋着に「BORN IN PARIS」とドでかくプリントされている問題をどうにかしたい。そんなことを言ってられるのも、本当の地震の恐さ知らないからだろう。出来ればこの先も知りたくない。地震は、いつ来るか分からないから恐い。今回の地震で被害に遭われた方々の一日も早い回復を祈りつつ、その危機感を新たにした。