シンガポールトランジッッッッッット!!

3rd ステーション 後藤真希

3rd ステーション

言わずと知れたキングでゴールドなナチュラルボーン無自覚ことゴマキちゃんの3rdアルバム、「3rdステーション」が大事件!! 実に11曲中9曲が僕の苦手なタイプか興味の対象外の曲調という非常事態!ながら、そんなものは小事! 昨今のハロプロ曲の私的ヒット率を鑑みれば、尚更小事! そして、ついこの間、狂ったようにリリースされるハロプロ関連メディアをオールラウンドでほぼ全て買っていた狂い咲いたハロプロファンの友人から「ハロプロ関連のブツを全部処分したいんだけど、買わない?」との連絡が入り、こうしてまた一人僕の周りのハロプロファンが消えた、というか、気がついてみればついに全滅し、俺、陸の孤島になる、という世相も時勢も反映した出来事があったのだが、それすら小事!! 大事件なのは、収録曲「シンガポール トランジット」が素晴らしすぎるコト!これ!

当然専門的な話は出来ないし、おそらくその必要もないので感覚的なことのみで語る上に読んでくれる人の理解も同意もまったく考慮しないけども、この「シンガポール トランジット」、何が素晴らしいかって、清涼感のあるメロとそれを効果的に引き立てる音たちで構成されたミディアムポップの上に、今更「かわいい!」だとか説明することもばかばかしい後藤真希ぴょんの声の中でも僕がもっとも好きな声が浮遊感たっぷりに流れていく、この異常なまでの気持ち良さが素晴らしい! もう聴けば聴くほど身中の毒や悪意が洗い流されていくのが実感できる。30回ほど連続際再生していると、細胞分裂は活発化し、新陳代謝が通常の5万倍のスピードに加速、その結果、肉体は時間の制約を飛び越えて進化と退化を繰り返し、膨張した意識と精神は宇宙の最果てにまで隈なく放たれ、そして、ニュー・ミムとしてピッコロ大魔王に激似なルックスに生まれ変わった24番目の僕が今これを書いている。指が四本というハンディを抱えつつも、それでも猶更新したくなるパワーをもってるのがこの曲だ。

そして、歌詞!! まず、夏休みに彼とシンガポール経由で南の島に旅に出る、のではなく、それを想像する小娘が彼に甘えて語りかける、という着眼点とコンセプトの変態ぶりにグッとくる。松浦の「トロピカ〜ル恋して〜る」でつんく♂が(40前の男なのに)爆発させた、"小娘が抱くラブラブ旅行前のワクワク感"も素晴らしいものがあったが、この曲で魅せた、それの更に手前の、”旅行に行く予定すらも立って無い段階での小娘の妄想”を(40前の男が)描く、というド変態丸出しのスタンスもまた、同じ変態仲間として共感することこの上ナシ。

でまた、そこで描かれる主人公(小娘)の人物設定及び描写が秀逸!!

ちょっとビックリする不思議な晩御飯食べて

なんだかほら分かんないような虫を見つけて

一日目が過ぎていく

たったこれだけの歌詞で、主人公の小娘が、土曜の昼2時ぐらいに放送する一線を退いたアイドルとダチョウ倶楽部クラスの芸人が出ているグルメツアー番組(”天国ツアー”と”地獄ツアー”の両方を攻める)から得た知識のみで構成されている東南アジアのイメージを持っていることまでを見事に描ききっており、そこから更に飛躍して、この小娘が、そういった庶民感覚を持ったどこにでもいる女子短大生で、その後なんとなくOLになって、今の仕事に疑問を抱いて英会話を始めて、でも一ヶ月ぐらいで辞めちゃって、みたいなところまで想像できなくも無い。それだけのテクニックを駆使しておきながら、しかし、そこに最近のつんく♂詞で鼻につくメッセージめいたもののがどこにも無いのがすばらしい。アイドルの歌はこうでなくちゃいけない。カワイイカワイイ言いたいんじゃボケ!ワシが聴きたいもんを歌わせるんじゃあ!という酷く我侭な、しかし純粋な、つまり俺たちの心の代弁者的な、そんなアイドルのプロデューサーとしての基本に立ち戻った姿勢には、部屋で一人全裸でスタンディングオベーションを送りたいと思う。