子供

タバコを買いに行く道すがら出会ったその少年は、見たところ小学校3,4年生ぐらいだろうか。昼は小学生、夜はポケモントレーナーというような、そんな、どこにでもいる感じの少年だった。



しかし、確かにどこにでもいる感じの少年ではあったが、どこか狂っていた。いや、いきなり普通じゃなかった。彼は、僕の前に現れるなり物凄い勢いで僕の視界を引き寄せ、その飛び込んできた景色は、否応無く僕の中にある常識を駆逐せしめた。つまり、「Tシャツ一枚」だった。



これは比喩でもなんでもなく、彼が纏っている衣服は、まさに半袖のTシャツのみだったのだ。これが8月ならなんてことの無い話だが、2月という時節柄、恐ろしく衝撃的だった。むしろ、恐かった。その目的の不明さがやたら恐かった。しかも、「冬に」「子供が」「半袖Tシャツ」というだけでかなりの破壊力なのに、そのTシャツの襟元が「Vネック」だったのがヤバかった。ふと気を抜くと爆笑してしまいそうな自分を押し殺し、震えながら歩いた。